LASER(light amplification by stimulated emission of radiation)
レーザーとは文字通り、人工の光エネルギーを増幅して照射する装置です。
まずは光の特徴から簡単に解説していきます。
目次
光ってなんぞや
光は電磁波のひとつで、X線や紫外線、赤外線、無線などが含まれます。
光は波として空間を伝わっていくと同時に、目には見えないほど小さな粒(粒子)でもあります。粒の数が多くなればなるほど光は明るくなります。
光は波長(波の山から山までの長さ)によって目に見える色が変化します。目に見える光は可視光線といい、380nmから780nmまでの波長の光を人間は色として認識でき、これより波長が長くなっても短くなっても人間には認識できません。
光はエネルギーを持ちます。ご存知の通り、太陽光によって地球は生命維持に必要なエネルギーを得ていますね。
光とレーザーの違い
簡潔に言うと、レーザーはまっすぐ規則正しくシンクロして進む光の集合体です
光とレーザーの違いを指向性、可干渉性、単色性の3つの側面から解説していきます。
①指向性
直進性ということもあります。普通の光があらゆる方向に拡散するのに対して、レーザーはまっすぐに進むので、より遠くに届くことができます。
それぞれ電球の光とレーザーポインターの光を想像していただくとわかりやすいかもしれません。
レーザーの指向性が優れているというのは、一方向に向かってまっすぐ強力な光を出力できることを指します。
②可干渉性(コヒーレンス)
複数の波が山は山、谷は谷の時に規則正しく重なっていることを”位相が揃っている”と表現します。
位相が揃っている光をコヒーレンスが良い光、位相がバラバラの光をコヒーレンスが悪い光と表現します。
複数の光の波がある場合、位相が揃っていないとそれぞれを打ち消しあってしまいます。
コヒーレンスが良い光は、打ち消し合うことなく一定の強さを保った規則正しい光と言え、レーザーはこちらに当てはまります。
③単色性
たとえば太陽光は複数の波長の光が含まれているので様々な色の光が混ざり合っています。
対してレーザーは単一波長の光の集合で、これを単色性といいます。
レーザーを発生させる仕組み
なんだか色々な用語が出てきましたが、この章でレーザーを発生させる仕組みについて簡単にお話したらいよいよ医療脱毛の話題に進みます。
レーザー発振の原理
この世界のあらゆるものは原子という粒子によって構成されています。
原子には負の電荷を持つ電子というさらに小さな素粒子が含まれており、この電子のエネルギーが高まることを励起といいます。
高いエネルギーを持っている状態はとても不安定なので、元の状態に戻ろう(遷移といいます)と電子はエネルギーを自然放出します。
電子は自然放出の際に光を放出し、その光が励起状態の電子を持つ他の原子に衝突すると次々に遷移を起こしていきます。
この現象を誘導放出と呼び、エネルギー・進行方向・位相が全く同じ光を放出します。つまりレーザーの特徴である①指向性②コヒーレンス③単色性の高い光が放出されるということです!
誘導放出される光の数を増やすことでレーザーを発振させることができます。
レーザー発振器の構造
レーザーを作り出すには励起源、媒質、増幅器の3つが必要です。
①媒質にエネルギーを与えるために励起源が光源として媒質に光を与えます。
②媒質中の電子が励起し、遷移を繰り返しながら誘導放出していきます。
③発生した光は2枚のミラーを反射し続け、誘導放出しながら増幅していきます。
④出力ミラーは透過性があるので、増幅された光がレーザーとして出力されます。
医療脱毛とレーザー
医療脱毛レーザーでは、毛のメラニン色素に光の粒子を吸収させ、熱変性によって毛の組織を破壊し脱毛効果を発揮させています。
医療脱毛で使用するレーザーは主に3種類
医療脱毛に使用するレーザーにはアレキサンドライト、ダイオード、Nd:YAG(ヤグレーザー)の大きく3種類がありますが、これらの名前の由来は媒質の種類によります。
アレキサンドライトとNd:YAGは熱破壊式、ダイオードは蓄熱式の脱毛器に搭載されていることが多いです。
アレキサンドライトは主にberyllium(ベリリウム、原子番号4、銀白色の非常に軽い金属です)とAlminium(アルミニウム、原子番号13、アルミですね)で構成された鉱物の一種です。
ダイオードはざっくり言うと半導体。
Nd:YAGは、Neodymium(ネオジム、原子番号60、レアアースのひとつです)、Yttrium(イットリウム、原子番号39、銀色のレアメタルです)、Aluminium(アルミニウム)、Garnet (ガーネット)の頭文字をとったものです。これらを添加して得られた個体を媒質としており、一般的にヤグレーザーと呼ばれたりします。
アレキサンドライトとNd:YAGは個体を媒質とした個体レーザー、ダイオードは半導体を媒質とした半導体レーザーになります。
他に美容施術で使用するレーザーにはCO2レーザーがありますが、こちらは気体レーザーですね。他にも液体を媒質とした液体レーザーなんてものもあります。
それぞれ波長が異なる
アレキサンドライトとダイオード、Nd:YAGは波長(レーザーの波の山から山までの長さ)が異なります。
それぞれアレキサンドライトは755nm、Nd:YAGは1064nm、ダイオードに関しては中の材料を変化することで様々な波長を生み出すことができますが脱毛レーザーに使われるダイオードは800nm程度のものが多いです(ちなみにNd:YAGは532nmに変化させることもできるのですが・・・ここでは関係ないので割愛!)。
波長が長いほど深達度が高くなる
波長が長くなるとレーザーは皮膚の深くまで到達します。これを深達度が高いと言います。
CANDELA社 GentleMax Pro製品特徴説明ページより引用
アレキサンドライトは755nm、Nd:YAGは1064nmであることを考えるとNd:YAGの方が皮膚の深層まで到達することがわかります。
波長が長いと深くまで届く分痛みを伴います。
波長が短いほど色素に反応する
波長が短いほどメラニン色素(黒や茶色の色素)への吸収率が高いです。
繰り返しになりますが、医療脱毛は、レーザーがメラニン色素に反応し熱エネルギーを発生、毛の組織を破壊します。
仕組みについては詳しくはこちらをご覧ください。
脱毛を効果的に行うには、メラニン色素にしっかり反応しつつ脱毛に関係のない要素には反応しない、というのが理想です。
皮膚に存在し、脱毛レーザーが反応してしまう邪魔なものといえば・・・血液に含まれる酸化ヘモグロビンです。
酸化ヘモグロビンへの反応が高いと、出血し紫斑を作ってしまったり、その炎症後の色素沈着を起こしてしまうリスクがあります。
つまり、出血などのリスクを最小に脱毛効果を最大にするためには酸化ヘモグロビンへの反応が小さくメラニンへの反応が大きい波長が最適となります。
以下のグラフをご覧ください。
CANDELA社 GentleMax Pro製品特徴説明ページより引用
そうですね、その付近の波長だと波長694nmのルビーレーザーというものが存在しシミ取りなどに用います。
実際、西洋人にはルビーレーザーを脱毛に用いることもあるのですが、日本人の肌色ではルビーでの脱毛は肌のメラニン色素に反応しすぎてしまいヤケドなどのリスクが高く危険です。
アレキサンドライトはちょうど良い波長なのでこんなに普及しているんですね。
アレキサンドライトレーザーの特徴
さて、以上を踏まえて今回はアレキサンドライトについてまとめましょう。
深達度が低く痛みが少ない
Nd:YAGと比較したときの話で、もちろん無痛ではありませんが、皮膚の深層にまで届かないことで過剰なダメージを抑えることができます。
皮膚の下(皮下)には凡そ2-5mm程度の毛が生えていると言われていますが、アレキサンドライトは長すぎない毛によく効きます。
また、毛はそれぞれ生える向き(皮毛角といいます)が違います。
毛の生える向きが寝そべっているほど皮毛角が小さい、つまり毛の根元が浅いところに存在するのでレーザーが届きやすく脱毛しやすいです。
こういった毛にもアレキサンドライトは最適です。
色素に反応しやすい
メラニン色素への反応性が高いことから、毛によく反応します。
反応性が良いと、パワー(出力)をあげすぎなくても脱毛が可能なので脱毛効率が高いです。
また血液には反応しづらい波長なので出血などのリスクが低いです。
デメリットもある
デメリットとしては、
・深達度が低いため深く長い毛の脱毛にはNd:YAGに劣る
・メラニン色素への反応性から焼けた肌や暗いスキントーンには使いづらい
などですね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
では深く長い毛や日焼け肌にはどうすれば良いのか?
アレキサンドライトは万能選手、Nd:YAGはピンチヒッター、みたいな感じでしょうか。
次の記事で解説します!お疲れ様でした。
まとめ
アレキサンドライトレーザーの特徴をまとめると、以下の表のようになります。
アレキサンドライト | ダイオード | YAG | |
---|---|---|---|
波長 | 755nm | 800〜940nm | 1064nm |
深達性 | 浅い | 中くらい | 深い |
色素沈着した皮膚への対応 | × | △ | 〇 |
代表的な脱毛器 | ジェントルマックスプロプラス | ソプラノチタニウム、メディオスターモノリス | ジェントルマックスプロプラス |
産毛への効果 | 普通 | 普通 | 普通 |
剛毛への効果 | 高い (とくに濃い毛に◎) |
普通 | かなり高い (とくに根深い毛に◎) |
日焼け肌への照射 | 基本的に脱毛不可 | 基本的に脱毛不可 | 基本的に脱毛不可 |
痛み | 普通 | やや強い | 強い |
参考文献
監修医師一覧(専門医情報)
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レナトゥスクリニック 新宿院院長私は患者として、医療脱毛、ボトックスやヒアルロン酸はもちろん、様々な施術を受けてまいりました。
自分自身で口コミや評判、症例などを調べて美容クリニックへ行き、成功したこともあれば失敗したこともあります。
このような経験をしてきたからこそ、本当に良い美容医療を責任感を持って提供したいという強い意志があります。
美容業界に携わる今、皆さまの美しくなりたい気持ちに真摯に応え、誠実な美容医療を提供していきたいと強く考えております。
小さなお悩みも、長年のコンプレックスも、お力になれればと存じます。
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東京女子医科大学出身、美容施術経験多数(なんでも聞いてください!)、instagram、Tiktok、X(旧Twitter)