ピコスポット後の色素沈着｜消えるまでの期間や注意点を医師が解説

ピコスポット後の色素沈着はどうすればいい？まず知っておくべき結論

ピコスポット後にシミが濃くなったように見える現象は、「炎症後色素沈着（PIH）」と呼ばれる一時的な反応です。
このPIHは原則として時間とともに自然に薄くなり、確実に治癒します。
特に顔では半年以内に改善することが多く、焦って薬を使ったり、過剰なケアを行う必要はありません。

この記事では、PIHの正体、自然治癒の目安、避けるべき行動、そして必要な場合の治療法について、医師の視点からわかりやすく解説します。

ピコスポット後の色素沈着（PIH）とは？原因と仕組みを解説

炎症後色素沈着（PIH）とは？

炎症後色素沈着（Post-Inflammatory Hyperpigmentation：PIH）は、肌に加わった炎症によってメラノサイトが活性化し、過剰にメラニンが産生されて皮膚に沈着する状態です。
ピコスポットなどのレーザー治療後にも炎症は確実に起こるため、PIHが生じるリスクがあります。

Negishiらの2018年の前向き研究では、アジア人20名・40病変にピコ秒レーザーを照射した結果、4.65%にPIHが発生したと報告されています。
※ここでのPIHは、術前よりもシミが濃くなったように見えるレベルの変化を指しています。より軽微なPIHを含めればその確率はもう少し高くなることが推測されます。

2025.07.05

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 PIHはシミとどう違うのか？

PIHは炎症をきっかけに起こる一時的な色素沈着で、時間の経過とともに自然治癒します。
一方、老人性色素斑（いわゆる「シミ」）は慢性的な紫外線ダメージや加齢によるもので、自然には改善しにくいという違いがあります。

色素沈着は自然に治る？改善期間の目安

PIHは自然治癒する皮膚反応

炎症後色素沈着（PIH）は、炎症が改善することで自然に改善する経過をたどる皮膚反応です。
摩擦や紫外線などの刺激を加えず新たなメラニンの産生を防ぐことで時間の経過とともに徐々に薄くなっていきます。
これは、皮膚のターンオーバー（角化・剥離・再生）の過程で、メラニンが少しずつ排出されるためです。

改善までにかかる期間の目安

PIHの改善には個人差がありますが、部位によって自然治癒のスピードに一定の傾向があります。

顔面ではおおよそ6か月以内に改善します。

一方、体幹・上肢・下肢などは改善までに顔面より長い時間を要することが多いです。
これはターンオーバーの活発さや皮膚の厚さなどの違いによるものです。

まれに長期化するケースもある

大半のPIHは自然に改善しますが、改善までに長期間かかるケースも報告されています。

これは、色素が深く沈着していたり、摩擦や紫外線などの継続的な刺激が加わっている場合に起こりやすいです。

色素沈着を悪化させないために大切なポイント

「刺激しないこと」が最大の治療

PIHが発生した際最も重要なのは、「いかに刺激を加えないか」であり、「積極的に何もしないようにする」ことが良いアプローチになります。

以下のような日常的な行動の見直しが必要です：

• 洗顔やクレンジングの際に擦らない

• 顔を拭くときもタオルで軽く押さえる程度に

• 化粧はできるだけ控えめにし、PIH部分は避けるか薄目に

• 化粧水や日焼け止めを塗るときにも摩擦を与えないように意識

H3-2. 紫外線対策は必須

紫外線はメラニン産生を刺激し、PIHを悪化させる最大要因のひとつです。
そのため、PIHの有無にかかわらず、毎日の紫外線対策は必須です。

• SPF30以上の低刺激な日焼け止めを使用する（SPF50以上がおすすめ）

• 外出時には帽子や日傘などの物理的防御も併用する

• 日焼け止めは擦らず、優しく置くように塗る

これらは、治療の前提条件とも言えるスキンケアです。

 色素沈着への対応法｜自然経過と必要に応じた治療選択肢

 経過観察が第一選択となるケース

PIHは基本的に時間の経過とともに自然に改善するため、まずは経過を見守ることが最良の選択肢となる場合が多くあります。

• 色調が徐々に薄くなっている場合

• 肌が敏感で外用薬や施術に対する反応が強い場合

上記のような場合には、刺激を加えずに待つことが最も安全で効果的な対応法です。

外用薬による治療の選択肢

自然治癒の過程が長引いたり、早期に改善を希望する場合には外用療法が検討されます。代表的な成分は以下のとおりです：

• ハイドロキノン：メラニンの生成を抑える。刺激性があるため注意も必要

• トレチノイン：ターンオーバーを促進。赤みや皮むけのリスクがある

• アゼライン酸：比較的マイルドな作用で長期使用に向くとされる

これらは医師の診察のもと、症状や肌質に応じて適切に使用することが重要です。

 ピーリングの併用で改善を促進

ケミカルピーリング（例：サリチル酸ピーリングなど）は、角質除去と肌の再生促進によってPIHの改善を後押しする方法です。
外用療法と併用することで、相乗効果が期待されます。

ただし、強く反応を起こしすぎるとPIHを悪化させる恐れがあるため、必ず医師の判断と管理のもとで行う必要があります。

【参考文献】

・宮田成章編　美容皮膚医療　ホントのところ 克誠堂出版株式会社 2020年
・葛西健一郎.シミの治療 このシミをどう治す？ 第2版.　文光堂.2015年
・N.Kashetsky, A.Feschuk,M.E Prat,Post-inflammatory hyperpigmentation: Asystematic review of treatment outcomes.J Eur Acad Dermatol Venereol.Mar;38(3):470-479.

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