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ヒアルロン酸注入が紫外線で傷んだ肌を再生する仕組みとは？

美容医療の現場で広く使われているヒアルロン酸（HA）注入ですが、単なるボリュームアップやしわ改善だけでなく、肌そのものを再生させる効果があることが、最新の研究で明らかになりました。特に注目されるのは、紫外線により機能低下した線維芽細胞を架橋型ヒアルロン酸（cross-linked HA, CL-HA）が再活性化し、再びコラーゲンを生み出すというメカニズムです。

Importantly, considering that collagen bundles continue accumulating noticeably for at least 1 year, our observations indicate that newly synthesized type I procollagen is converted to stable/durable dermal type I collagen following CL-HA injection.

とあるように、ヒアルロン酸を注入すると少なくとも1年間著しくコラーゲン束が蓄積し続けることを考慮すると、私たちの観察は、新たに合成されたI型プロコラーゲンが架橋ヒアルロン酸注射後に安定/耐性のある真皮I型コラーゲンに変換されることを示していたとのことです。

つまり、架橋ヒアルロン酸を自分の顔に定期的に注射をすることで、顔のコラーゲン量を増やすことができ、アンチエイジングにつながると考えられます。また、ヒアルロン酸を入れていたものと、入れていなかったものでは長期的なシワ・たるみ・ハリ・老け感の予後も異なると考えられます。

研究の背景：紫外線による肌老化と線維芽細胞の変性

皮膚老化の大きな要因の一つが紫外線（UV）です。UVダメージにより、真皮内の線維芽細胞は縮小・変性し、コラーゲンなどの細胞外マトリックス（ECM）を作る能力が著しく低下します。これがしわやたるみ、ハリ不足の原因になります。

研究概要：CL-HA注入による長期的改善効果の検証

Wileyに掲載された研究では、CL-HAをヒト皮膚に注入し、1週間後から12ヶ月までの時点で皮膚を組織学的・分子的に分析。以下の変化が確認されました。

• 注入直後から空間充填効果（スペースフィラー）を発揮し、しわの凹みが改善
• 1週間後には線維芽細胞が再活性化。伸展・伸長し、コラーゲン合成関連遺伝子（COL1A1、HSP47など）の発現が上昇
• 4週間後には周囲に厚く密なI型コラーゲン束が形成され、12ヶ月後も持続

紫外線でダメージを受けた線維芽細胞を“蘇生”させる

特に注目すべきは、紫外線で変性し、コラーゲンを作れなくなった線維芽細胞が、CL-HAの注入によって再びコラーゲンを作るようになる点です。

これは、CL-HAの物理的な支え（mechanical scaffold）が線維芽細胞の構造を整え、細胞を“伸ばす”ことで、再びコラーゲン産生経路（TGF-β/HSP47など）を活性化させるという、構造的刺激による細胞の再生を意味しています。

ヒアルロン酸は“埋める”だけの時代ではない

本研究の意義は、「ヒアルロン酸注入＝しわを埋める」ではなく、肌の構造自体を再構築し、線維芽細胞を活性化させ、肌質そのものを改善する治療であるという臨床的なパラダイムシフトを示唆しています。

今後、CL-HAは単なるボリューム補充剤としてではなく、肌再生のための生体活性注入剤としての価値がさらに高まっていくでしょう。

参考文献

この内容は以下の査読付き論文を基に構成しています。

• Implications for cumulative and prolonged clinical improvement following cross-linked hyaluronic acid injection: A histological and molecular study
• DOI: 10.1111/exd.14998 / PMID: 38284186

レナトゥスクリニック医師コメント：ヒアルロン酸注入における“機械的刺激”の重要性について

今回紹介した研究では、架橋型ヒアルロン酸（CL-HA）の注入が、紫外線によって変性した線維芽細胞を再活性化し、I型コラーゲンの新生を再び促す可能性があることが示されました。このメカニズムは「物理的な空間の充填」だけでなく、「細胞への機械的刺激」が大きな役割を果たしていると考えられます。

この知見に基づくと、注入の“位置”や“層”が、単なるボリュームデザインではなく、線維芽細胞への生物学的刺激という観点でも極めて重要であると再認識させられます。

靭帯に沿った注入（MD Code®）の有効性

当院では、靭帯や支持組織に沿った注入（いわゆるMD Code®テクニック）を重視しています。これらの部位は解剖学的にテンションが加わりやすく、ヒアルロン酸が注入された際に線維芽細胞へ持続的な機械的ストレッチ刺激を与えるのに適したポイントといえます。

また、注入されたヒアルロン酸が長期間物理的に空間を維持することで、その刺激が長期的に細胞へ影響を与える可能性があり、この点でもアラガン社の製剤（ボリューマ、ボラックスなど）の持続力の高さが大きな意味を持つと考えています。

やわらかい製剤（ボライト）と硬めの製剤の使い分け

肌質改善目的のボライトのような柔らかい製剤は、表皮〜浅層真皮における保水やハリ改善には適していますが、今回のように線維芽細胞に対する機械的再活性化により靭帯部分のコラーゲンをより強化するという観点で考えると、ある程度の「押す力＝硬さ」をもった製剤のほうが有効ではないかとも考えられます。

特にボリューマやボラックスのような硬さと持続性のある製剤は、ただ“形を作る”だけでなく、細胞の再活性という観点からも靭帯に打つMd codeでのアンチエイジング治療において有用性が高い可能性があります。

真皮層だけではなく皮下組織へのヒアルロン酸注入でもコラーゲンは増える

The results demonstrate that the HA/sorbitol composition is able to boost the production of HA, elastin, collagen type I, collagen type III, and fibrillin-1 in the dermis while providing a proper quality of skin morphology.

Histologic Effects of Fractional Lasers and Energy-Based Devices on Intradermally Injected Hyaluronic Acid Filler for Improving Skin Smoothness

皮下組織への注入でも、やはり真皮への機械的刺激は入るのか、真皮コラーゲン量は増えるという結果が出ています。

まとめ

これまでヒアルロン酸注入は「形を整える治療」として捉えられることが多くありましたが、今後は「肌構造を再構築する治療」として再定義される時代に入ってきていると感じています。私たちレナトゥスクリニックでは、こうした最新の研究に基づいた理論と技術を取り入れ、“見た目だけでなく、肌そのものの若返り”を目指すヒアルロン酸治療を追求しています。

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