ピコQスイッチレーザーRF超音波美容治療等のヒアルロン酸への影響

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レーザー治療のヒアルロン酸注入への影響

近年、美容医療においてレーザー治療とヒアルロン酸（HA）注入の併用が注目されています。2025年に発表された最新の研究では、これらの施術が皮膚に与える影響について詳細な解析が行われました。

以下の論文についてご紹介いたします。

Ge S, Chung HJ, Weiss RA. Histologic Effects of Fractional Lasers and Energy-Based Devices on Intradermally Injected Hyaluronic Acid Filler for Improving Skin Smoothness. Lasers Surg Med. 2025 Jan;57(1):96-100. doi: 10.1002/lsm.23863. Epub 2024 Nov 29. PMID: 39611591.

研究の背景と目的

これまでの研究では、エネルギーベースのデバイス（EBDs）が事前に注入されたHAヒアルロン酸フィラーに対して臨床的な影響を与えないことが示されていました。しかし、新たにFDA承認を受けたHAフィラーに対するEBDsの影響は明らかではありませんでした。本研究の目的は、さまざまなEBDsが皮内に注入された新しいHAフィラーに与える即時の組織学的変化を評価することでした。

研究方法

腹部形成術の皮膚にHAを浅く注入し、以下のデバイスで処置を行いました。

• 755nmピコ秒レーザー（回折レンズアレイ付き）
• 1064nmピコ秒レーザー
• 1064nm Qスイッチレーザー
• 絶縁マイクロニードル付きラジオ波（RF）
• 体積指向性熱影響超音波（VDTI）
• 熱機械的フラクショナル損傷（TMFI）デバイス

ゾーン1は未処置のコントロールとして使用されました。

結果

組織学的解析により、ヒアルロン酸はは表皮から中真皮に存在していることが確認されました。フラクショナルQスイッチおよびピコ秒レーザーによる処置では、表皮および真皮にレーザー誘発の光破壊が観察されました。RFマイクロニードリング、VDTI、およびTMFIデバイスによる処置では、コラーゲン束の熱損傷と真皮の脱水が確認されました。

結論

ピコQスイッチRF超音波美容レーザーデバイスによる処置後、HAヒアルロン酸に即時の形態学的変化は認められませんでした。しかし、HAフィラーはHAと水で構成されているため、熱を発生するデバイスがHAの分子構造に与える影響については不明な点が残されています。

臨床的意義

この研究は、レーザーやエネルギーベースのデバイスとHAフィラーの併用が即時の形態学的変化を引き起こさないことを示しています。しかし、熱を発生するデバイスの使用には注意が必要であり、施術の順序やタイミングを慎重に計画することが推奨されます。

詳細な情報は、以下のPubMedリンクをご参照ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39611591/

レーザー・エネルギーデバイスの種類と特徴

本研究で使用されたレーザーおよびエネルギーベースデバイス（EBD）は、美容皮膚科で広く用いられている最新の機器です。それぞれのデバイスについて、原理や特徴、期待できる効果を以下にわかりやすくまとめました。

① 755nm ピコ秒レーザー（回折レンズアレイ付き）

• 代表機器：PicoSureなど
• 原理：アレキサンドライトレーザーをピコ秒単位で照射。回折レンズにより微細な光音響刺激を多数与える。
• 効果：シミ・くすみ・ニキビ跡の改善、小じわや肌質の向上
• メリット：色素へのダメージが少なく、色黒の方でも安全に施術可能

② 1064nm ピコ秒レーザー

• 代表機器：PicoWay、Discovery Picoなど
• 原理：1064nmのNd:YAG波長で肌深部へピコ秒照射、光音響効果を高める
• 効果：深部の肝斑・色素沈着、毛穴、小じわの改善
• 特徴：メラニンが深い位置にある肌悩みに特に有効

③ 1064nm Qスイッチレーザー

• 代表機器：MedLite、Pastelleなど
• 原理：Qスイッチ技術によりナノ秒単位の高出力パルス照射
• 効果：シミ除去、ADM、刺青（タトゥー）除去など
• 注意点：ピコ秒よりダウンタイムが長く、色素沈着リスクがやや高い

④ RFマイクロニードル（絶縁針）

• 代表機器：Sylfirm X、Morpheus8など
• 原理：微細な針を皮膚に刺し、針先端から高周波（RF）を照射
• 特徴：絶縁針を使用することで表皮を保護し、真皮にのみ熱作用
• 効果：毛穴の開き、たるみ、ニキビ跡、小じわなどの改善

⑤ 超音波デバイス（VDTI：Volumetric Directional Thermal Injury）

• 代表機器：ウルセラ（Ulthera）、ソフウェーブ（Sofwave）など
• 原理：超音波を一点集中させ、SMAS層や真皮層に熱凝固ゾーンを形成
• 効果：リフトアップ、小じわ改善、たるみ予防
• 特徴：皮膚表面にダメージを与えず、深部に作用

⑥ 熱機械的フラクショナル損傷（TMFI）

• 代表機器：Tixel（ティクセル）など
• 原理：400℃に加熱された金属チップを肌に数ミリ秒接触させ、熱を点状に伝える
• 効果：肌のハリ改善、毛穴・しわの軽減、皮膚の再生促進
• 特徴：レーザー・光を使わないため、色素沈着リスクが低く、色黒の肌にも安全

まとめ表（簡易）

レナトゥスクリニック医師コメント：RFや熱を発生する機器でもヒアルロン酸に影響がない理由について

今回の論文では、RFマイクロニードルやTMFI（熱機械的フラクショナル損傷）など、熱を発生させるエネルギーベースデバイスをヒアルロン酸フィラー注入部位に照射しても、「即時的な形態学的変化（histologic change）」は認められなかったと報告されています。

一見すると、「熱を加えているのに、なぜヒアルロン酸が変化しないのか？」と疑問に思われるかもしれません。しかし、臨床的な視点と物理的特性の理解を踏まえると、この結果は非常に理にかなっています。

1. 熱の作用が局所的かつ瞬間的であること

RFマイクロニードル（特に絶縁針タイプ）では、針先端のみに高周波電流が集中する設計となっており、フィラーが分布している真皮中層または浅層とは物理的にズレた層に熱が届いている可能性があります。また、TMFIもチップ接触部のみのごく浅層（表皮〜浅真皮）に限定した熱損傷であり、HAが注入されている部位にまで熱が十分に到達していないと考えられます。

2. 評価されたのは「即時的な変化」のみ

この論文では、施術直後に皮膚を採取し、病理組織学的に観察しています。したがって、「分子構造の変性」や「水分保持能の低下」といった中長期的な劣化や変化は対象外です。言い換えれば、「注入直後にEBDを照射しても、HAが“すぐに壊れて消える”わけではない」というだけであり、長期的な安定性は引き続き慎重な評価が必要です。

3. 架橋されたヒアルロン酸は比較的耐熱性がある

ヒアルロン酸フィラーは、非架橋の製剤に比べて50〜60℃程度までは安定性を保つことがわかっています。RFやHIFUなどのエネルギー機器は、たしかに熱を発しますが、その熱は限られた範囲にしか伝達されない設計となっており、全体に均一な加熱が起こるわけではありません。

まとめ：エネルギーデバイスとの併用は慎重に計画すべき

今回の研究結果は、EBDとヒアルロン酸の併用施術に対する一定の安全性を示す根拠となりますが、それでも「絶対に影響がない」と断言するには時期尚早です。とくに、高出力設定や重ね打ち、注入層への直打ちは、構造的な劣化を招く可能性があります。臨床においては、照射タイミングや部位の選定、エネルギー強度の調整を的確に行う必要があると考えています。

今後は、照射後数日〜数週間の時点での分子構造変化や、注入フィラーの吸収速度に及ぼす影響を評価するような研究も期待されます。

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