蓄熱式脱毛であろうが、熱破壊式脱毛であろうが、バルジと毛母の破壊が必要
目次
バルジ領域(毛隆起)とは
毛の構造は、バルジ領域を境に、毛周期にかかわらず変化しない不変部(恒常部)と成長期に伸展短縮を繰り返す可変部に分けられます。
バルジ領域は、
不変部の一番下に存在している。
毛の形成に重要な幹細胞を含んでいる。
毛乳頭と最も重要な関係をもっている。
毛周期を制御している。
部位がパルジ領域(毛隆起)です。
バルジ領域の位置
毛包上部には、立毛筋と脂腺組織が付随しています。
立毛筋付着部が少し膨らんでおり、ここの毛隆起部をバルジ領域と呼んでいます。
さらに詳しく言えば、バルジ領域はニッチと呼ばれる周囲で働く細胞群の微小環境によって維持・制御されていると考えられています。
バルジ領域の幹細胞
最近の研究で、バルジ領域(毛隆起)の上部に存在する多分化能を有する毛包幹細胞と、パルジ領域(毛隆起)における角化細胞の前駆細胞である2種の幹細胞が存在するといわれています。
バルジ領域と毛乳頭の関係
毛の成長の源である毛包幹細胞やメラノサイトの幹細胞(色素幹細胞)はパルジ領域にあり、ここから幹細胞が乳頭部に移行し、上行する毛乳頭細胞と合流して新しい毛が作られていきます。
ここで作られた細胞は、血中のホルモン濃度の影響によって成長速度や太さが左右されます。
男性型脱毛症では、頭頂部は男性ホルモンの影響を受けやすく、毛周期の退行期に移行しやすくなります。
バルジ領域と毛周期の関係
毛は休止期→成長期→退行期の毛周期で再生と退縮を繰り返します。
毛包幹細胞は、バルジ領域にニッチ環境を持ちます。
毛の休止期は、ニッチから毛包幹細胞への抑制シグナルと活性化シグナルのバランスで保たれています。
脱毛とバルジ領域の関係
毛が生産される細胞はどこ?
かつて、毛幹を作っているのは、毛乳頭なので、毛包幹細胞は毛乳頭だろうと考えられてきました。
しかし、「1つの毛包を摘出して毛乳頭部分だけ切断除去して移植しても毛は生える」という実験研究が発表されました。
また、バルジ領域を破壊しなくても脱毛が完了するという発表もされています。
レーザー脱毛によってバルジ領域は組織学的に破壊されていない
引用:玉田伸二:脱毛用アレキサンドライトレーザーによる組織額的変化. 医学脱毛:多毛症の基礎からレーザー脱毛まで. pp69-73. 金芳堂. 京都. 2000
これはバルジ領域に存在する毛包幹細胞が破壊されなくても脱毛が完了する証拠と言えるでしょう。
脱毛には2種類の細胞の破壊が必要
現在では、間葉系幹細胞と上皮系幹細胞が相互作用をおよぼしながら分化して、毛包を形成することが明らかになっています。
つまり、毛を生えなくするには、上1/3から一番下まで、全体的に毛包細胞を破壊する必要があります。
レーサー脱毛ではパルジ領域(毛隆起)とともに毛乳頭を熱変性させることが重要で、メラニンを含む毛がこの両者と接しているかどうかで、脱毛ができる、もしくは毛質が細くなる変化が起こります。
脱毛ターゲットの考えの変化
かつては、レーザー脱毛のターゲットは毛乳頭であり、その部分の破壊が減毛をもたらすと考えられていたが、発毛のメカニズムの解明が進むにつれ、今はバルジ領域の破壊も脱毛に不可欠であると認識されています。
脱毛のターゲット | |
1990年代 | 毛母細胞 バルジ 皮脂腺管開口部 |
1998~ | 毛包とその周囲組織 |
2023 | バルジと毛母 |
蓄熱式脱毛のバルジ理論はウソ
蓄熱式脱毛は、皮膚の浅い位置にあるバルジ領域がターゲットなので、低出力で脱毛が可能である、という理論を唱えている方もいらっしゃいます。
しかし、バルジ領域と毛母の両方の破壊が必要なことがもうわかっているので、この理論はウソです。
蓄熱式脱毛であろうが、熱破壊式脱毛であろうが、バルジと毛母の破壊が必要なのです。
毛の構造
参考に毛の構造を記載しておきます。
毛と呼ばれるケラチンでできた組織は、解剖学的には毛幹と呼ばれます。
毛幹は外側から毛小皮→毛皮質→毛髄の細胞で構成されています。
成長し真皮上層に出て行くにつれ、それそれの細胞が角化していき毛を作っていきます。
角化が終了すると、毛髄は空洞化します。
皮膚内部にある毛幹を包んでいる部分は毛包と呼ばれ、毛包は毛幹とそれを包み支持する外毛根鞘、内毛根鞘で構成されています。
毛包最下部は丸く膨らんでいて、毛球と呼はれます。
毛乳頭、毛母があり、血管、神経が集まっています。
そして、ここには毛母細胞が存在し、この細胞から毛幹が作られて成長していきます。
皮表より出るようになると、爪と同じように細胞組織はなくなり、ケラチンだけで構成されていきます。
まとめ
バルジ領域は、蓄熱式脱毛の理論でよくみかけますね。
バルジ領域は毛の発育に大きく関わっていますが、バルジだけではなく、バルジと毛母の相互作用が毛包の形成には大切です。
蓄熱式脱毛であろうが、熱破壊式脱毛であろうが、バルジと毛母の破壊が必要なのです。